- 1反は約991.7㎡で統一
- 玄米の平年帯は450〜600kg/反を起点に設計
- 換算はkg→俵→袋→合→茶碗の順で一本化
単位 | 代表値 | 覚え方 |
---|---|---|
1反 | 991.7㎡ | ほぼ0.1ha |
1俵 | 玄米60kg | 袋2つ分 |
1袋 | 30kg | 家庭でも扱う重さ |
1合 | 白米約150g | 茶碗約2杯 |
田んぼ一反の意味と俵の基礎
まずは言葉と数字をそろえます。日本の圃場では歴史的な面積単位と国際単位が併用され、帳票や会話で混線しがちです。基本は1反=約991.7㎡=約0.09917ha、10反=1町=約9,917㎡、そして行政や補助金申請の基準となる1ha=10,000㎡です。取引では玄米重量をkgで扱い、地域慣習として俵=60kg表記が残っています。家庭向けの説明では白米の合(約150g)が伝わりやすいため、目的に応じて単位を切り替えながらも、計算の母体は必ずkgで統一しましょう。
1反とa㎡haの関係を実務で統一する
aは100㎡なので、1反は約9.917aです。社内で「面積はha/㎡のみ」、会話では「町・反併記」のようにルールを一枚紙にしておくと、資料の食い違いが急減します。
俵と袋とkgの違いを整理する
俵は玄米60kgの目安、袋は30kgが一般的です。実務はkg主表記で、俵や袋は括弧で補助にすると誤解が減ります。
玄米と白米の表記差を理解する
玄米→精米で重量は目減りします。精米歩留は一般に90%前後を想定し、白米換算は「玄米kg×0.9」をたたき台にすると説明が安定します。
圃場面積の誤差をどこで吸収するか
登記面積と実耕作面積にズレが出ることがあります。収支や助成の根拠はどの面積で集計するかを最初に全体で合わせましょう。
暗算のコツと覚え方を共有する
「反はほぼ千」「俵は六十」「袋は三十」。この三つを共通言語にしておくと、現場のやり取りが速くなります。
項目 | 正確値 | 現場近似 | 備考 |
---|---|---|---|
1反 | 991.7㎡ | 約1,000㎡ | 計画時は近似でも可 |
1俵 | 60kg | 袋2つ | 玄米基準 |
精米歩留 | 約90% | ×0.9 | 品種と精米条件で変動 |
注意:帳票・契約はkg/㎡/haで固定し、俵や町反は補助表記に留めると安全です。
Q&A
- Q. 俵は地域で重さが違いますか? A. 実務は60kgが広く用いられます。
- Q. 1反は0.1haですか? A. ほぼ等しいですが厳密には0.09917haです。
一反で米何俵かの目安と幅
結論から言えば、慣行栽培の平年帯は玄米450〜600kg/反が実務的です。俵換算では7.5〜10俵/反。ただし年次の天候や圃場条件、品種、作型で上下します。そこで本稿では意思決定をぶらさないために、悲観・中立・楽観の三本線で収量レンジを持ち、販売や在庫、資金繰りの見積もりを安定化させる方法を採用します。
平年帯と高低年の三本線を設定する
たとえば中立を520kg/反と置き、悲観470kg、楽観580kgとします。こう決めると、売上や乾燥調製の回転数、人手の段取りが立てやすくなります。
地域と品種で変わるレンジを知る
冷涼地は高温障害が出にくく品質が安定しやすい一方、登熟の積算不足が懸念されます。多収型の品種は倒伏対策と蛋白管理が鍵、食味系は成熟期の刈遅れを避け品質優先で刈り取ります。
直播と移植での傾向を押さえる
直播は省力の利点がありますが、初期立ち上がりの気象リスクを織り込みます。移植は育苗コストがかかる反面、初期生育のコントロールがしやすい傾向です。
シナリオ | 玄米kg/反 | 俵(60kg) | メモ |
---|---|---|---|
悲観 | 470 | 約7.8俵 | 高温寡照・倒伏 |
中立 | 520 | 約8.7俵 | 平年並み |
楽観 | 580 | 約9.7俵 | 適温十分な日照 |
- ポイント:議論は「値」ではなく帯で行いましょう。
- 三本線は毎年の実績で上書きすると精度が上がります。
「三本線で見積もるようにしてから、直販の在庫切れと倉庫の滞留が目に見えて減りました。」
収量を上げる優先順位
やみくもに手を増やすより、効き目の大きい順に注力する方が再現性は高まります。基本の順番は適地適期×品種選定→水管理→肥培設計→病害虫・倒伏対策→収穫・乾燥調製です。年次の気象で入れ替わることはありますが、まずは水と温度、ついで窒素の利かせ方を安定させるのが近道です。
水管理と用水温の基本を守る
出穂前後は深水を意識し、穂温を下げて高温障害を緩和します。猛暑年は水深5〜7cmの安定維持、水口・水尻の流れをつくると酸素供給にも寄与します。落水は早すぎると登熟不足になるため注意が必要です。
肥培設計と蛋白値のバランスを取る
多収を狙って穂肥を過多にすると蛋白が上がり食味が下がることがあります。土壌診断で不足要素を補い、穂肥は遅効や過多を避け、倒伏抵抗性とのバランスを事前に設計します。
病害虫と倒伏を未然に防ぐ
- 予察情報をチェックし適期防除を徹底
- 台風前に水位と排水路の点検を実施
- 畦畔の草管理で風通しと日照を確保
施策 | 期待効果 | 注意点 |
---|---|---|
深水維持 | 高温障害の緩和 | 過深で根腐れに注意 |
適期穂肥 | 登熟の充実 | 遅効肥で蛋白上昇 |
畦畔管理 | 病害虫発生低減 | 梅雨明け前に一度 |
注意:高温年の早期落水は逆効果になりがちです。浅く長くの姿勢で登熟を見守りましょう。
ミニ統計:週3回の水位点検体制を導入した圃場で、整粒歩合が平均で2pt改善した事例が多く見られます。
俵から合や茶碗数への換算と説明
数値は相手に伝わって初めて意味を持ちます。社内集計はkgで、対外説明は相手に合わせて俵・袋・合・茶碗に翻訳しましょう。家庭向けの説明は白米基準が伝わりやすく、取引先には玄米基準の方が実務的です。換算のルートを一本化しておくと、部門ごとの数字が整います。
家庭向けに伝わる言い換えを用意する
1合の白米は約150g、炊飯後は約330gで茶碗約2杯です。たとえば520kg/反なら約3,466合、茶碗で約6,900杯と説明できます。
取引先向けの表記ルールを統一する
受発注書はkg主表記、俵・袋は括弧補助にすると誤解が減ります。直販の2kg・5kg袋と業務用30kg袋の対応表を社内で共有しましょう。
シナリオ別の換算例で誤差を減らす
乾燥調製の水分や精米歩留で数字は微妙に揺れます。レンジで示しつつ、説明は必ず「玄米基準」「白米基準」を明記しましょう。
- 俵=kg÷60
- 袋=kg÷30
- 白米kg=玄米kg×0.9(目安)
- 合=白米kg÷0.15
玄米kg/反 | 俵 | 袋 | 白米kg | 合 | 茶碗 |
---|---|---|---|---|---|
470 | 約7.8 | 約15.7 | 約423 | 約2,820 | 約5,640 |
520 | 約8.7 | 約17.3 | 約468 | 約3,120 | 約6,240 |
580 | 約9.7 | 約19.3 | 約522 | 約3,480 | 約6,960 |
Q&A
- Q. 合は玄米で数えますか? A. 消費者説明は白米基準が伝わりやすいです。
- Q. 俵表記だけで十分? A. 実務はkg基準、俵は補助が安全です。
収支シミュレーションと単価感の整え方
収量のレンジを決めたら、売上と費用に落とし込み、意思決定の材料にしましょう。価格は相場や販売形態で動きますから、複数の単価をあてて感度分析を行うのが実務的です。固定費(機械償却・保険・地代)と変動費(種苗・肥料・農薬・燃料・乾燥電力)を分け、損益分岐点は固定費÷限界利益率で求めます。
直販と出荷の収益配分を比較する
項目 | 直販 | 出荷 | 併用 |
---|---|---|---|
単価 | 高め | 相場連動 | 中間 |
工数 | 梱包配送あり | 少 | 中 |
在庫 | 小口回転 | ロットで回転 | 分散 |
固定費と変動費で損益分岐を出す
限界利益率は(単価−変動費単価)÷単価です。乾燥電力や燃料が上下する年は、三本線の収量に対し複数の単価を当てる表をつくり、赤字ラインを可視化します。
感度分析で相場と収量の揺れに備える
- 収量:470/520/580kg
- 販価:290/320/350円/kg
- 乾燥電力:基準±20%
- 燃料:基準±15%
シナリオ | 収量kg | 単価円/kg | 売上円/反 |
---|---|---|---|
悲観 | 470 | 290 | 136,300 |
中立 | 520 | 320 | 166,400 |
楽観 | 580 | 350 | 203,000 |
注意:直販の送料は販売費で別立てに。単価に丸め込むと限界利益率を誤ります。
「固定費と変動費を分け、三本線×複数単価で表を作ったら、どのラインで赤字に落ちるか一目で共有できました。」
ミニ統計:感度表を導入した直販併用農家で、在庫滞留月数が平均1.2か月短縮した報告が散見されます。
年間工程とチェックリストで再現性を上げる
収量の再現性は、工程管理と記録でグッと高まります。忙期ほど抜け漏れが生じるため、時系列の見取り図とチェックリストを標準装備にしましょう。面積表記や換算ルールもテンプレート化し、毎年の更新点を色で目立たせると共有が速くなります。
時系列に沿った作業の見取り図を作る
- 種子手配と育苗計画
- 圃場整備・施肥設計
- 田植え・活着確認
- 中干し・水管理の見直し
- 出穂期の深水維持
- 収穫・乾燥調製
- 出荷・在庫管理
記録テンプレと面積表記を標準化する
区画IDと面積を㎡/反の二重表記にし、収穫重量はkgのみで入力、俵・袋は自動計算に任せます。乾燥後の水分と等級を紐づける欄を設け、翌年の設計に生かします。
単位ミスを防ぐ教育とレビューを回す
- 新人研修で「反は千・俵は六十・袋は三十」を共有
- 帳票はkg主表記の統一テンプレを採用
- 収穫期前に換算ルールのレビューを実施
チェック項目 | 頻度 | 担当 |
---|---|---|
水位点検 | 週3回 | 圃場担当 |
面積照合 | 年1回 | 管理担当 |
換算ルールの確認 | 収穫前 | 販売担当 |
ポイント:工程表は色分けで可視化すると、繁忙期の抜け漏れが減ります。
まとめ
田んぼ一反で米何俵かを明確にするには、まず1反=約991.7㎡の基礎を全員で共有し、集計はkg基準に固定するのが近道です。慣行栽培の平年帯は玄米450〜600kg/反(およそ7.5〜10俵)を起点に、悲観・中立・楽観の三本線で在庫と資金繰りを設計しましょう。
説明は相手に合わせて俵・袋・合・茶碗へ翻訳し、換算ルートを一本化します。収量向上は「適地適期×品種→水→肥培→病害虫→収穫乾燥」の順で優先し、収支は固定費と変動費を分けて感度分析で備えると意思決定がぶれません。
最後に、年間工程と記録テンプレ、単位の標準表記を整えれば、翌年の計画はさらに確度が高まります。今日からは、自圃場の三本線(例:470/520/580kg)と換算表を一枚にまとめ、現場と販売で同じ数字と言葉を使っていきましょう。
- 面積と換算を一本化
- 収量は帯で議論
- 工程と記録はテンプレ化
- 収支は固定×変動で把握